机に向かうメイはにまにまと笑みを漏らす。
その様子を隣りで本を読んでいたキールが訝しげに見つめる。
「何にをにやにやしているんだ」
メイの腕に光るのはキールから貰ったブレスレットだ。
それを見つめてにまにましていたのだ。
「誕生日、期待していてね」
「少ない小遣いで何を期待するっていうんだ」
「あー、プレゼントは気持ちだよ!」
「ああ、分かったから課題を進めてくれ」
ぶうと頬を膨らませてメイはまだ何か言いたそうだ。
渋々と課題に取り組み始めたメイを横目にキールは本のページをめくった。
「キールの誕生日まで3週間くらいしかないけどその間、2歳差だね」
「そんなこと気にしてたのか」
「悪い?」
「いや」
初めてメイがこの世界にやってきた時は16歳だった。
そして、クラインで迎えた始めての誕生日。
メイは17歳になった。
19歳のキールは10月の15日で双子の兄アイシュと共に20歳になる。
キールにとっては大した差はないと思うのだがメイにとっては違うらしい。
「誕生日がそんなに嬉しいか」
「もちろん!」
メイの誕生日にはディアーナやシルフィス以外にもセイリオスやシオン、
ガゼルなどからもプレゼントを貰った。
アイシュは特製のケーキを作ってお祝いしてくれた。
「嬉しいよ、だってキールが祝ってくれたんだもん」
さらりと言われてキールの視線がメイの横顔に止まる。
柄にもなく心臓が早鐘を打つ。
「だからキールの誕生日も一緒にお祝いしようね」
にっこりとメイは満面の笑みを浮かべた。
どうやら自分はその笑顔に勝てそうにない。
「また3歳差になるのはちょっと悲しいけど」
「年の差を気にしているなんてまだまだ子供だ」
つい口を出たキールの厭味にメイは頬を膨らませる。
「どうせ私はお子様ですよー。
キールに少しでも近づきたいだけだよ」
「バカ」
「あ、ひどーい。誕生日祝ってあげないんだから!」
誕生日は毎年、兄が祝ってくれる。
もう祝ってもらっても嬉しくない年になりつつあったが。
メイにそう言われて少しだけ誕生日を祝ってもらえることが嬉しいと感じる。
読みかけの本に視線を戻してキールは口元に笑みを浮かべた。
彼女の贈ってくれるプレゼントが少しだけ楽しみになった。
FIN