幸せな時間

 言葉足らずですれ違ってしまう、不器用なあなた。
 そんなあなたを愛しく思える日々は確かに幸福でした。
 蒼焔色の瞳が見据える未来を共に歩むことができる。
 ただの女ではなく、ただの臣下ではなく、扱ってくださった日々は優しさに満ちていました。
 あなたは、また孤独の道を歩むのでしょう。
 ただ一人の天子として。
 その道を共に歩むことができずに、支えることができず、不甲斐ない気持ちを抱えています。
 あなたが目に映らず流した涙の数だけ、あなたが誰にも聞こえずに漏らした弱音の数だけ、私は後悔をしながら抱きしめたいと思いました。
 そんなあなたとも別れの時間が来たようです。
 先立つ私を許してください。
 あなたが孤独でないように、子をなせたことは幸いでした。
 傍にいて、あなたを慰めてくれるでしょう。
 私がそうしたように。
 共に過ごした時間は忘れ難いものです。
 それを抱きしめて、眠るように還ります。
 あなたと一緒にいる時間は幸せでした。
 それを伝えることができなかったのが残念でした。

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