声を出して

 本当は泣きたいくらい辛い。
 叫び声を上げたいと心が鳴く。

 けれども許されることではない。
 それに小さな頃から泣くことは苦手だった。
 涙を見せることは負けを認めるようなものだった。

 だから誰の前でも泣くことはできなかった。
 それでも、どうしてだろう。

 涙を流さなず泣いていると花薔薇のような佳人は寄り添ってくれた。
 何も訊かずに、ただ隣に座っていてくれた。
 そして握った拳に白い手を重ねてくれる。

 赤子のように泣いてもいいのだろうか?

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