あなたを思う

 あなたは決して強い人ではなかった。
 周囲からは冷徹で、人間ではないように見られていたけれども。
 あなたは強く見せるのが得意だっただけだ。
 心の奥底では迷子のように不安を抱えていた。

 あなたは弱い人だった。
 多分、誰よりも『愛』に飢えていた。
 繋ぐ手も、撫でてくれる手も、欲しいと思っても手に入らなかった。
 他人には見せない場所で泣いていた。

 あなたは誰よりも人間らしい人間だった。
 だから、民草たちの嗚咽が理解できたのだろう。

 あなたは優しい人だった。
 身近な人間にすら理解されなかったけれども。
 天子というものはそういうものだろう。

 孤独なあなたは誰よりも玉座が似合っていた。
 さあ、万民が快哉を叫ぶような善政を。
 臣は平和というものを見てみたいのです。
 戦乱の世を平らげてください。

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