私は何度でも、何度でも。
くりかえし、くりかえし。
「何をしている?」
「何でもありませーん!」
少女は走る。
青紫の袍をまとう青年は、自分のペースで歩く。
決して、護衛武将なんかに歩幅を合わせたりはしない。
けれども。
「お待たせしました」
は、司馬懿の隣に並ぶ。
ただ一人と決めた人の隣に立つ。
守れるように。
その身を、その命を。
隣に立つことを許されたのだから、は全力で守ろうと思う。
「遅い」
低い呟きが落ちる。
「スミマセ〜ン。
これでも、急いだんですよ〜。
そうは見えないかもしれませんけど」
少女は笑った。
司馬懿は、歩調を変えることはない。
護衛武将なんかに合わせる、ことはない。
でも。
でも。
は笑みを深くする。
三国一冷たいといわれる軍師は、待っていてくれるのだ。
追いつくまで、いつまでも。
黒羽扇をゆらりともてあそびながら、琥珀のような目は待っていてくれる。
だから、何度でも、何度でも。
くりかえし、くりかえし。
気がつくたびに。
好きになる――。