「ねえ、周瑜さま!」
江東の双華の一つがニコニコと笑いかける。
その笑顔は綺麗なだけではなく、愛らしいものだった。
「どうしたのだ、小喬」
夫である青年は手を止めて、優しげに妻を見る。
職務に追われる日々の中、屈託のない小喬の笑顔が唯一の彩りだった。
そう、唯一の……。
「周瑜さま、今日はお祝いなんだって!」
小喬は嬉しそうに、ポンと手を叩く。
「そうなのか、初めて知ったな」
周瑜は微笑んだ。
都督である自分よりも、妻の方が情報通なのは皮肉な結果だ。
それだけ潤いがない生活を送っているらしい。
「うん、急に決まったんだよ。
あたしも良くわからないんだけど。
とにかく、お祝いなの!
すっごいよね!」
体中で喜びを表現する彼女の方が、周瑜から見れば十分「すごい」と思う。
「嬉しいよねー!
えへへっ。
ねっ、周瑜さま!」
「ああ、そうだな」
周瑜は微笑んだ。
そして、妻の頭をなでる。
「楽しみだね!
今から、すごい楽しみ!
早くお祝いはじまらないかな!」
小喬は満面の笑みで言った。
その笑顔をいつまでも見ていたい、と周瑜は思った。