別れの日に

 季節は到来する。
 いつまでも同じでいられる訳がなかった。
 知っていた。
 気がついていた。
 でも、もう少しだけとすがりついていた。
 女々しい感情をひた隠しにして、笑顔を作る。
 『サヨナラ』とは言えなかった。
 永遠の別れになるようで、嫌だった。
 だから、かわりに陸遜は『お元気で』と言った。
 いつもは真っ直ぐ見つめる緑の瞳は揺れていた。
 きっと引き止めて欲しかったのだろう。
 二人の関係では、それは許されない。
 言葉にしたことがない気持ちが陸遜の後ろ髪を引く。
 国のためだ。
 全てに逆らって逃げた先に幸せは待っていないだろう。
 たとえ辛くても笑顔で送り出すのが最上なのだろう。
 だから、微笑んだ。

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